『しあわせのタネ』

赤文字部分にお客様がお決めになられた文字が印刷されます(実際は黒文字印刷です)

表紙

みゆきに 贈る
世界でたった一冊の絵本
就職おめでとう!
これからも変わらず、家族仲良く!
2020年3月31日
父・母・弟より

みゆきに
しあわせの花がたくさん咲きますように
しあわせのタネ

とても気持ちのいい日曜日。
みゆきが
東京都品川区の公園で休んでいると、
何かが落ちてきました。
それは、ふしぎな形をしていました。
「…なんだろう…」

「…なにかのタネかなあ…」
みゆきは、
それをポケットに入れました。
それからなのです、
いろいろなことが
起こりはじめたのは…。

ある日、散歩をしていると、
いろいろな声が聞こえてきたのです。
みゆきが誰かとすれ違うたびに。
「…つかれたな…」
「…会いたいな…」
「…あやまらなくちゃ…」
それは通り過ぎた人たちの
心の声でした。

いつも見かける女性と犬にすれ違うと、
「…こんにちは…」
ふしぎな声が聞こえたのです。
「…え、もしかして、犬の声?…」
みゆきは驚いて
「いま、何か言った?」
犬に話しかけました。
「よくしゃべるのよ」
女性は楽しそうに笑いました。
そして、
「…きっと動物が好きなのね…」
女性の心の声が聞こえました。
ポケットの中で、
タネはふんわりと光っていました。

みゆきは、 |

みゆきはつぶやきました。
「…まさか、猫たちや風、
木の葉や花や鳥たちと話ができるなんて…」
タネのふしぎなチカラを感じながら。

ある日、散歩をしていると、
女性がベンチに座っていました。 「…つらいな、つらいな…」 みゆきが聞いたのは、 心の声でした。 「…ママ、元気になって…」 犬の声も聞こえました。 タネを持ってから、喜び、悲しみ、苦しみ、 心の声が聞こえるようになっていたのです。 |

みゆきは
鳥や風や猫たちに
たずねました。
何かできることはないかと。
ポケットのタネを握りしめながら。

すると風はやさしくあたりを包み、
鳥は楽しい歌をさえずりました。
猫も足元に静かに寄り添い、
頬ずりしたのです。
みゆきは
まわりの空気が温かく変わっていることに
気づきました。

「こんにちは、いいお天気ですね」
みゆきは話しかけました。
「あら、ほんと、今気づいたわ。いいお天気。」
女性は空を見上げながら言いました。
そして、心の声が聞こえてきました。
「…ふしぎ。
とても元気になったわ。ありがとう…」
「…ありがとう…」
寄り添っている犬の声も聞こえました。
いつしか女性に微笑みがかえり、
みゆきの心も
温かくなっていました。

タネを持ってからみゆきは 今まで気づかなかったことに 気づき始めました。 笑顔になると 笑顔の輪がひろがること。 いつも笑顔でいると、 幸せな気分になって 前向きになれること。 |

タネがあると、
楽しい思いつきも、次々と浮かびます。
「そうだ、手づくりメニューで
みんなを
おもてなししよう。
いっしょに食べるだけでうれしくなるから」
おいしいものは、幸せのタネ。

寒い日はみんなに
温かい紅茶をいれてあげよう。
暖まるだけで、笑顔になるから。
湯気は、幸せのタネ。
暑い日にはみんなに氷を入れて
ジュースを作ってあげよう。
冷たいだけで、ふーっとほどける。
ガラスのしずくは、幸せのタネ。
みゆきはつぶやきました。
「…みんなの笑顔にありがとう…」

みゆきは
タネを持ってから、
いままでより自分が
「ありがとう」を
たくさん言っていると感じていました。
気づくと歌を口ずさんでいて、
心が軽くなっていることも。
できているんですね。

「…ふしぎなことはぜんぶ、このタネのおかげ…」
そう思いながら、
タネをさわろうとしましたが
どこにもありません。
みゆきは
胸に手を当てながら、つぶやきました。
「もうあのタネはいらない。だってここにあるから」

幸せのタネは、夢のタネ。
みんなの心の中にあります。
嬉しいことや楽しいことが降り注いで、
素敵な花を咲かせます。
みゆきは、いま28歳。
みゆきにこれからも
もっともっと幸せなことが起こりますように。
